アイデアの発想から形にするまで:「建築家フランク・ゲーリー展」で独創的な建築の理由を知る

東京に一時帰国中に行った企画展。
今年見た企画展の中では断トツにおもしろかったのが、21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「建築家フランク・ゲーリー展」でした。

わたしは建築家の専門家ではないものの、旅先で建築を見るのが好きで、これまでに世界中いろんな場所を訪れてきました。もちろんフランク・ゲーリーの名は以前から知っていたものの、なかなか彼の建築を実際に見る機会がなかったのです。それが今年9月に実現。パリにあるルイ・ヴィトン財団(Fondation Louis Vuitton)という現代美術館の建築はフランク・ゲーリーが手がけています。

この「Fondation Louis Vuitton」の建物については、以前書いた記事をご覧ください。

<関連>フォンダシオン ルイ・ヴィトン建築展:フランク・ゲーリーが手掛ける空に浮かぶガラスの船〔東京〕

この企画展、フランク・ゲーリーのアイデアの発想からそれを形にするまでのプロセスが展示されています。ぐにゃぐにゃ建築とも言われる彼の建築が、なぜその形になったのか、以前から興味があったので、そんなゲーリーのアタマの中を覗きに行ったのですが、これがまあ、びっくりした。印象に残っていることはこんなことです。

◉アイデアを生み出す環境を整えることに手を抜かない

ある意味誰も真似のできないような、見たら一発でゲーリーだと分かるような建築。アイデアの発想にはその環境や生み出すプロセスが大事だとゲーリーは語っていました。例えば部屋ならば、「あまりモノがなさすぎる空間からはアイデアは生まれない」とも。適度にごちゃごちゃしていることが大事なんだそう。

あともうひとつ。ゲーリーの会社オフィスにまた特徴が。
アイデアを生み出すプロセスの中で「模型」にこだわっているそうです。自分の手で作って壊してを繰り返すことで見えてくる形。技術的にはPCの中で全て完成させることもできるはずですが、そうして「手を動かす」ことで初めて感じられる違和感を大事にしている、というのがとても印象的でした。

フランクゲーリーオフィス

(ゲーリーのオフィス。模型を組み立てるスペースが広くとられています)

結果的に模型を作るということは、それだけオフィスに作業スペースがないといけないし、作った模型は増え続ける一方なので、その模型を保管しておく倉庫だって必要。それだけで結構な費用もかかる。でもそうだとしても、「アイデアを発想するための環境づくり」に決して手を抜かないゲーリーの姿勢に、彼の建築に対する思いを見たような気がします。ほんと、こんなオフィスで働いてみたい!(惚れ惚れします)

◉建築にどんな思いを込めているか

この企画展には随所にゲーリーの考えかた・思想が文字として表されているのですが、その中で印象に残った言葉が「人々がそこにいたいと思うような、人間性のある建物」というところでした。

フランクゲーリー展

ゲーリーの建築は外観の奇抜さがよく取り上げられていて、わたしも正直その印象が強くありました。それが今年訪れたパリのFondation Louis Vuittonで印象が大きく変わったのです。確かに外観はとても個性的なのですが、中に入って強く思ったことが「建物の中にいるととても落ち着く」ということでした。ある意味、奇抜な外観なので、中身は正直期待していなかったと言うほうが正しいのかもしれません。これは、本当にびっくり。

館内は現代アートを中心に作品が展示されていたのですが、導線も分かりやすいし、適度な自然光が入って明るい。なんというか、中にいる人(ここではアートを見に来た人)のことをよく考えられている建築だと感じました。本当に居心地がいいんです。

そんなことをパリのゲーリー建築で感じていたので、「人間性のある建物」という表現はとてもしっくりきたし、何だかとても納得。人がそこにいたいと思えるか、人間性のある建物になっているか、を問いながら模型を作っては壊しを繰り返しているんでしょうね。模型も、中まで作りこまれているものも多数展示されていました。

◉アイデアを実現するための「ゲーリー・テクノロジー」というプラットフォーム

この企画展で度肝を抜かれたのがこの「ゲーリー・テクノロジー」
あの個性的な建築を実現するために考えた建築設計のプラットフォーム。写真撮影が禁止のエリアだったので写真はないのですが、アイデアからどう形になるのかがいくつかのプロジェクトを例に映像で紹介されていました。専門家ではないですが、このプラットフォーム、ものすごい…!

簡単に言うと、「この建築に関わる人全てに同じ情報がタイムリーに共有できる仕組み」とでも言うんでしょうか。そして「建設現場においてミスが起こりにくい仕組み」をも、このプラットフォームを使うことで可能になる。いやー、この技術はほんとすごい。(しびれました)

建築の映像なのですが、この考えかたはきっと、同じ業界でない方でも何かしら参考になる部分があるんじゃないかな。なんて思います。

ゲーリーのアタマの中を知って、もっと彼の建築が見てみたいなーと思ったのが観終わってすぐに思ったこと。以前からスペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館に行ってみたいと思ってたのですが、これは行かなきゃだめだな。

ゲーリー建築本

(これまでゲーリーが手がけた建築。まだまだ行きたいところがたくさん)

<Information>
建築家フランク・ゲーリー展@21_21 DESIGN SIGHT
会期:2015年10月16日(金)- 2016年2月7日(日)
http://www.2121designsight.jp/program/frank_gehry/

武谷朋子(タケタニトモコ)でした :)

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武谷朋子のプロフィール
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